秋の澄んだ夜空に浮かぶ月を観賞する「月見」の風習は、万葉の昔から続く習わしであり、九世紀中ごろの文徳天皇の時代に「月見の宴」の記録が残されています。
「中秋の名月」は旧暦の八月十五日ですが、その前夜を「待宵(まちよい)の月」と呼び、同日の「十五夜」、十六日の「十六夜」、その後「立待月」(十七日)「居待月」(十八日)「寝待(ねまち)月」「臥待月(ふしまち)」(ともに十九日)というように、月を楽しむみやびな呼び方があります。
さらに、名残の月や後の月とも呼ばれる「十三夜」。中秋の名月から約一カ月遅れの新月から教えて十三日目の上弦の月です。ことしは九月二十五日が十五夜で、十三夜は十月二十三日になります。
満月のみをたたえるのをよしとせず、欠ける陰影をも愛(め)でるのを日本人の美意識の表れでしょう。中秋の名月は中国から伝わった風習ですが、十三夜は中国にはない月見です。宇多法皇が十三夜の月を愛で「無双」としたことが始まりとする説や、延喜十九(九一九)年に醍醐天皇が開いた観月の宴が風習化された説などがあります。
また、十三夜は別名「栗(くり)名月」とも呼ばれますが、みなさんはクリはお好きですか? 農耕民族だった日本人はコメや麦などを育てながら、山野に自生する「古能美(このみ)」や「久多毛能(くだもの)」を採取していました。
静岡県の登呂遺跡からは、クリやカキ、モモ、クルミなどの遺物が出土していますし、三内丸山遺跡ではクリを栽培した跡が見つかっています。
古事記や日本書記によれば、垂仁天皇に仕えていた田道間守(たじまもり)は「常世の国」(中国南部~インド)から橘(たちばな)などのかんきつ類を十年かけて持ち帰ったそうです。一般には橘が菓子の原点と考えられていますが、それがクリだとしても不思議ではないくらいに、古くから親しまれてきた木の実です。
いかつい毬(いが)に包まれてはいても、その形はどこか愛らしく、香ばしく焦げた焼きグリや蒸したものにまつわる思い出は、誰もが持ってます。
私の店ではみつ漬けにしたクリをまんじゅうやヨウカンにします。ちょうど香り高い新小豆も出回り、それぞれの素材が引き立てあって、クリとあんが秋の到来を知らせてくれるかのように口の中で溶けていきます。
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季節の和菓子
あん焼
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